静岡県焼津市のシャッター通り化が進む駅前通り商店街に新しいコミュニティづくりを進めるための、「知」をシェアする本の拠点づくりに取り組んでいます。
「まちが育て、まちを育てる」をコンセプトに、完全民間主導の図書館「みんなの図書館さんかく」を運営しています。「さんかく」の名前は「参画」に着想を得ており、図書館の開館までのプロセスにおいても多くの市民が参画し、場づくりを行ってきました。
民間主導と言ったように、行政などからの補助金や助成金は一切受けずに運営を行っており、私設の公共空間をつくる社会実験に取り組んでいます。

たくさんの「参画」でできた「さんかく」
「みんなの図書館さんかく」の大きな特徴は、完全民営で図書館を運営していることにあります。「さんかく」では、「一箱本棚オーナー制度」という仕組みを導入し、オーナーは、月額2千円で、自分がプロデュースする本棚を図書館の中に持つことができます。
本を置くこと以外にリターンがないこの仕組みですが、2020年10月の時点で40名の方がオーナー契約をしています。こうしたオーナーの皆さんの参画で、どうにか最低限の運営費を賄うことができ、現在では黒字経営となっています。
また、「さんかく」の一部のスペースは、チャレンジショップとして貸出を行っており、週3日はコーヒースタンドが、週1日はアジアのお茶を提供する事業者が、営業を行っています。「将来お店を出したい」という人にとって、いきなり店舗を借りることはハードルになりますが、このスペースがひとつの予行演習になっています。
2020年3月3日3時33分33秒にグランドオープンし、現在では1週間で120名程度の利用者が訪れています。利用者の層も様々で、子連れや小学生、高齢者を中心とした地域住民はもちろん中高生や大学生、若手の社会人なども利用し、本を媒介にした多世代交流の拠点として成長しつつあります。
蔵書している本は、すべて市民から寄贈を受けた本であり、蔵書数は2000冊を超えています。貸出数も常時150冊を超えており、まちの中で本の循環が起こっています。
加えて、「さんかく」の一部のスペースでは、地元書店「焼津谷島屋」と連携し、新刊本の販売や予約販売もできるようになっています。本の購入がネットに移行し、経営が大変になる地元書店の売上に貢献できればという思いに共感し、それほど多くの注文ではありませんが、本を購入する市民が徐々に増え始めています。
また、新型コロナウイルスの影響を受けて、事業が一部ストップしていますが「さんかく」を中心に「さんかく大学」という市民大学を開講しています。
「さんかく」のスペースがあまり広くないことから、少人数で狭く深くをモットーとした市民講座です。一箱本棚オーナーが講座の企画に携わるほか、インターン生の大学生が企画を主導しています。
まだはじまったばかりの取り組みですが、民間で図書館を運営する「私設の公共空間づくり」に関心を持つ方は多く、視察依頼や取材依頼など、多くの問い合わせをいただいています。
また、既に同じスキームで、9月に石川県加賀市にて「おんせん図書館みかん」が開館、12月に兵庫県豊岡市にて「だいかい文庫」が開館、同じく12月に長野県茅野市に「My Book Station」が開館しました。これらの「みんなの図書館」の立ち上げ支援に当法人も携わっています。



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マニフェスト大賞優秀賞を受賞
